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インプラント手術の恐怖を緩和する静脈内鎮静法とは?

投稿日:2025年2月17日

カテゴリ:インプラント

歯科治療において、外科処置は切っても切れない関係にあります。昨今広く行われるようになったインプラント手術もそのひとつといえます。そんな外科処置に対して、恐怖や不安を感じる人は少なくありません。「治療中の痛みが怖い」「手術の音や感覚が苦手」「過去のトラウマがある」といった理由から、歯科治療自体を避けてしまう人もいるでしょう。

そんな方々にとって有効なのが 「静脈内鎮静法(IV sedation)」 です。これは、腕の静脈から鎮静剤を投与することで、半分眠ったようなリラックスした状態で治療を受けられる方法です。今回は、静脈内鎮静法のメリットや流れ、注意点について詳しく解説します。


静脈内鎮静法のメリット

恐怖や不安を軽減できる

歯科治療に強い恐怖を感じる方にとって、静脈内鎮静法で得られる最大のメリットは リラックスした状態で手術を受けられる ことです。この方法により、眠ったような状態で治療に臨むことができます。

痛みや不快感を軽減できる

静脈内鎮静法を適用すれば口の中に麻酔はしなくても良いのか?という質問をよくいただきます。しかし、静脈内鎮静法や全身麻酔を適用した場合でも口の中に行う局所麻酔は行います。しかし、それと併用することで通常よりもさらに痛みを感じにくくすることが可能です。睡眠に近い状態なので、処置中の嫌な音などもほとんど気にならなくなるため、ストレスが軽減されるでしょう。

治療中の記憶が残りにくい

静脈内鎮静がなされた状態では、意識がぼんやりしており、手術中の記憶がほとんど残りません。「気がついたら治療が終わっていた」という感覚になるため、不快な記憶やトラウマなどを感じにくくなります。

嘔吐反射を抑えられる

歯科治療中に嘔吐反射(口の中に器具が入ると反射的に吐きたくなる現象)が強く出る方にも有効です。鎮静状態では嘔吐反射がある程度抑えられ、スムーズに治療が進められます。それでもやはり嘔吐反射が出る、あるいは出たことがある場合は、全身麻酔レベルの鎮静が必要になります。

長時間の治療でも楽に受けられる

1~2本程度のインプラント埋入手術であれば平均1時間前後で終わるのですが、多数の歯に対してであったり、口全体にわたるような大規模で長時間を要する治療は、通常であれば不可能でないにしても大きなストレスや疲労感を与えることになります。しかし、静脈内鎮静法を用いることで、長時間の治療も短く感じるため、患者にとって負担が大きく軽減されます。

治療内容に影響されない

インプラント手術をはじめとする外科処置だけでなく、一般的なむし歯の治療や歯石除去のようなクリーニングでも静脈内鎮静法を用いることができます。いわゆる歯科恐怖症とされる方や、1回の治療で一気にむし歯治療を済ませてしまいたい方でも有効です。

鎮静剤以外の薬剤も投与できる

静脈内鎮静法はその名の通り血管内に薬剤を点滴という形で直接送り込んでいます。見方を変えれば血管内へのルートがあるので、ほかの鎮静剤以外の薬剤を同時に投与することが出来るということです。例えば、術後に痛みや雑菌感染リスクの高い大規模な外科処置を行っている場合、抗生剤や鎮痛剤を同時に投与したりします。また、当院では高濃度ビタミンC点滴も取り扱っており、静脈内鎮静法と併用することも可能です。


静脈内鎮静法の流れ

1. 事前診察・カウンセリング

あらかじめ患者の健康状態を確認し、適用可能かどうかを判断します。高血圧や心疾患などの全身疾患がある場合は、事前にかかりつけ医師と対診・相談をお願いすることがあります。

2. 静脈内鎮静剤の投与

治療開始前に、全身の状態の問診を行い、問題がなければ腕の血管に点滴針を留置し、そこから鎮静剤を投与します。数分以内に鎮静効果が現れます。

3. 治療の実施

鎮静状態が確認されたら、治療が開始されます。患者は眠ったような状態ですが「口を開けて」「顔を傾けてください」といった指示に従うことは可能です。この状態下で行われるのであれば、処置中の痛みや不快感はほとんど感じません。

4. 回復と休息

治療が終わった後は、鎮静剤を止めて徐々に覚醒させるようにしていきます。覚醒したあとでも、倦怠感・だるさがしばらく残るので休憩していただきます。鎮静剤の効果が完全に抜けるまで時間がかかるためそれまでは基本的に待機頂くようになります。

5. 帰宅

静脈内鎮静法を受けた当日は、車や自転車の運転は避ける必要があります。可能であれば、家族や友人に迎えに来てお帰り頂くのが理想的ですが、徒歩あるいは公共交通機関を利用するのも有効です。


静脈内鎮静法の注意点とデメリット

1. 適用できない場合がある

高血圧、心疾患、呼吸器疾患などの全身疾患や持病がある方は、事前の診察・診断で静脈内鎮静法は適用不可と判断されることがあります。

2. 完全に意識を失うわけではない

静脈内鎮静法は「全身麻酔」とは異なり、完全に眠ってしまうわけではありません。ぼんやりした状態にはなりますが、外部の刺激には反応できる状態です。言い換えれば刺激自体はわずかながら認知出来るということです。

3. 術後のふらつきや眠気がある

鎮静剤の影響が数時間続くため、治療後しばらくはぼんやりした感覚が残ります。ある程度の回復を経てからお帰りいただきますが注意が必要です。そのため、当日は激しい運動や車の運転は避ける必要があります。

4. 保険適用外で費用がかかる

静脈内鎮静法は健康保険適用外のため、自己負担となります。費用は歯科医院によって異なりますが、一般的には 3万円〜10万円 程度かかることが多いです。処置時間が伸びればそれに比例して追加料金が発生することもあります。

5. すべての歯科医院が導入しているわけではない

静脈内鎮静法は高度な専門知識を必要とする点から、基本的に麻酔科医が行います。麻酔科医が歯科医院に勤務・所属している場合もあれば、大学病院などから派遣されてくることもあります。通っている歯科医院で静脈内鎮静法を検討する場合はスタッフにきいてみたりHPでの案内を確認してみてもいいかもしれません。


まとめ

インプラント手術などの歯科分野での外科処置に対して不安や恐怖感を感じる方にとって、静脈内鎮静法は非常に有効な選択肢です。適切に使用すれば、リラックスした状態で治療を受けることができ、治療に対する不安や恐怖感を軽減できます。

しかし、完全に意識を失うわけではないことや、健康状態によっては適用できない点といった注意点やデメリットもあります。治療前に歯科医師とよく相談し、他の選択肢(笑気ガス麻酔や全身麻酔など)も含めて、自分に合った方法を選びましょう。

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